潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。

日本での患者数は約16万人。もともとは欧米で多い疾患として知られていましたが、国内でも急速に増え、この10年で約1.8倍になりました。

症状

特徴的な症状としては下痢や血便が認められます。痙攣性または持続的な腹痛を伴うこともあります。重症になると、発熱、体重減少、貧血などの全身の症状が起こります。また合併症として、皮膚の症状、関節や眼の症状が出現することもあります。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があります。免疫の異常が発症に関わっていると考えられていますが、原因は明らかになっていません。

診断

潰瘍性大腸炎の診断は、症状の経過と病歴などを聴取することから始まります。最初に細菌やウイルスの感染による腸炎、牛乳不耐症(乳糖不耐症)、クローン病、大腸がん、ストレスがおもな原因で起きる「下痢型過敏性腸症候群」などの病気と鑑別が必要です。その後、一般的にX線や内視鏡による大腸検査を受け、大腸の炎症や潰瘍がどのような形態で、大腸のどの範囲まで及んでいるかを調べます。さらに”生検”と呼ばれる大腸粘膜の一部を採取することで確定診断されます。

治療

潰瘍性大腸炎には根本的な治療法がなく、潰瘍性大腸炎を完全に治す薬はありませんが、腸の炎症を抑え症状をコントロールする有効な治療は存在します。

〈5-アミノサリチル酸薬(5-ASA)製薬〉

メサラジン(ペンタサやアサコール)があります。経口や直腸から投与され、持続する炎症を抑える作用があり、下痢、下血、腹痛などの症状は著しく減少します。軽症から中等症の潰瘍性大腸炎に有効で、再燃予防にも効果があります。

〈副腎皮質ステロイド薬〉

プレドニゾロン(プレドニン)等があります。経口や直腸から投与されます。中等症から重症の患者さんに用いられ、強力に炎症を抑えますが、再燃を予防する効果は認められていません。

〈血球成分除去療法〉

血液中から異常活性化した白血球を取り除く治療法で、LCAP(白血球除去療法:セルソーバ)、GCAP(顆粒球除去療法:アダカラム)があります。ステロイド薬が無効な患者さんの活動期の治療に用いられます。

〈免疫抑制剤〉

ザチオプリン(イムラン、アザニン)は、ステロイド薬を中止すると悪化してしまう患者さんに有効です。また、タクロリムス(プログラフ)はステロイド薬が無効の患者さんに用いられます。

〈生物学的製剤〉

難治性の患者さんには、インフリキシマブ(レミケード)やアダリムマブ(ヒュミラ)といった注射薬が使用されます。

〈手術療法〉

内科治療が無効な場合(特に重症例)、副作用などで内科治療が行えない場合、大量の出血、穿孔(大腸に穴があくこと)、癌またはその疑いの場合には手術が必要となります。

潰瘍性大腸炎は、症状が良くなったり(寛解期)悪くなったり(活動期)を繰り返す疾患です。速やかに炎症を抑えて寛解状態にする(寛解導入)とともに、再燃を予防し、寛解を長く維持する(寛解維持)ことが治療の目標となります。免疫異常を調整する薬の登場で寛解導入も寛解維持も以前より容易にできるようになり、今後は、個々に合ったきめ細かな治療が期待されています。