誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

老化やパーキンソン病、アルツハイマー病といった神経疾患、筋疾患、脳血管障害の後遺症などによって、
飲み込む機能(嚥下機能)咳をする力が弱くなると、
口腔内の細菌、食べかす、逆流した胃液などが誤って気管に入りやすくなります。

この誤嚥がきっかけとなって、細菌が肺に入って発症するのが誤嚥性肺炎です。
なかでも寝ている間に少量の唾液や胃液などを誤嚥することがあり、
本人も自覚がないため繰り返し発症することが多く
体力の弱っている高齢者では免疫力も低下しているため命にかかわるケースも少なくない病気です。

 

 

~症  状~

肺炎の典型的な症状である発熱や咳、色の濃い痰などが見られず、
普段よりなんとなく元気がない、ぼんやりしている、
食欲がないといった症状しか現れないことも多いのが特徴です。

 

~検査診断~

明らかに誤嚥がある人やすでに嚥下機能が低下している人は、
血液検査や胸部X線検査が行われ、この検査で肺炎像が見られたり、
白血球増多やCRP(炎症性C蛋白)上昇が見られると誤嚥性肺炎と診断されます。

 

~治  療~

治療には原因菌に対する抗生物質を用いますが、ステロイド剤を用いることもあります。
さらに呼吸がうまくできずに酸素欠乏状態になった場合は入院治療を行い、
酸素吸入や状態によっては人工呼吸器を装着することもあります。
かかってしまった際には完全に治すことが大切です。

 

~誤嚥性肺炎の予防~

誤嚥性肺炎の予防には、次のことを心がけましょう。

(1)食事のときにむせない工夫をする

誤嚥しにくい姿勢をとり
(あごを引いて、椅子には深く腰掛け、かかとをしっかり床につける)
食べることに集中します。
食事の前に少し水分を摂り、のどの通りを良くします。
一口で食べる量を少なめにし、ゆっくりと食べましょう。

脳卒中の後遺症等で嚥下機能が低下している場合は、
その人に合った食事および介助の方法をかかりつけ医と相談し、
誤嚥防止に努めましょう。


(2)口腔の清潔を保つ

口腔は肺や胃腸の入り口です。
適度な湿度と温度が保たれている口腔は細菌にとって居心地よく、
歯磨きやうがいを怠るとすぐに細菌が繁殖します。
そのため歯磨きをしっかり行い、口の中の細菌を減らし、
そして肺へ運び入れないことが重要です。


(3)胃液の逆流を防ぐ

ゲップや胸焼けなどがある場合は胃液の逆流が起こりやすく、
食後2時間ほど座って身体を起こしていることで、逆流を防止できます。


(4)飲み込む力をつける

飲み込みの力を維持するため、
また、唾液を出しやすくするために、口やのどの体操をしましょう。

①頬をふくらませたり、引っこめたりします。
②大きく口を開いて、舌を出したり、ひっこめたりし、左右にも動かします。(各2~3回ずつ)
➂「パパパ、タタタ、カカカ、ラララ」とゆっくりと発声します。
はじめはゆっくりと5~6回繰り返し、次に早く5~6回繰り返します。

どれも、無理のないように行いましょう。


(5)薬を用いる

誤嚥性肺炎の再発予防には、
脳梗塞予防薬やACE阻害薬や漢方薬などが有効とされ、用いられることがあります。


(6)肺炎球菌ワクチンの予防接種を行う

インフルエンザワクチンと合わせて接種すると、相乗効果があると言われています。