むし歯予防のための歯磨き粉選び

2023年から、歯磨き粉の使い方(特に小児における)に関する新たな推奨が示されました。
今回は日本のむし歯治療や予防を専門とする4つの学会が合同で出した声明について歯科医師からの視点で解説したいと思います。
<日本のむし歯事情>
日本の子どもにおけるむし歯の経験歯数は徐々に少なくなってはきているものの、依然として他の病気に比べてその有病率は高く、
昔と比べて歯を残すための技術や公衆衛生が向上していることから、大人、特に高齢者においてはむし歯の数は増加傾向にあると言えます。
都会の歯科医院の先生と話をしていると、乳歯のむし歯の治療は珍しい、なんて話もよく耳にします
(愛媛県で仕事をしているとまだまだそのような感覚はありませんが、将来的にはそのようになるのでしょう)。
<歯磨き粉に含まれるフッ化物(フッ素)について>
むし歯を予防するためにはさまざまなアプローチが存在していますが、フッ化物の応用は、過去の多くの研究からも高い予防効果が示されています。
歯磨き粉うがい歯科医院での塗布など、応用方法も多岐にわたっていますが、歯磨き粉を用いた局所応用は最も身近なものではないかと思います。
<今回の声明について>
今回の声明における主な変更点は以下の2つです。
・5歳までの濃度:500ppm→1000ppm
・6歳以降の濃度:1000ppm→1500ppm
ppmと言われると、ややとっつきにくいかもしれませんが、簡単に言えばこれまでよりも高い濃度のフッ化物が推奨されるようになった、ということです。
フッ化物濃度はある程度のところまで高ければ高いほど、虫歯に対する予防効果が強いと言われていますが、安全面も考慮すべき部分です。
<安全面について>
フッ化物のみならず、あらゆる医薬品にはメリットとデメリットがあるわけですが、量と濃度を鑑みたうえで、今回の改訂にいたりました。
ちなみにですが、これまでの推奨濃度は国際的な基準と比べると低いものであり、今回の改訂によって国際的な水準にやっと追いついたという印象が専門家の中ではあります。
ですので、安全面に関しては十分に配慮した提言であると考えられます。
なおフッ化物についてはさまざまな情報が錯綜しており、いわゆるデマのような怪しいものも散見されます。
注意が必要であると思われますので、心配な点は信頼できるかかりつけの歯科医院でご相談ください。
<現場の専門家の立場から>
🦷リスクに応じたむし歯予防🦷
私が出不精なせいかもしれませんが、できるものなら最小限の介入で何事も済ませたいもです。
色々なことに闇雲に手を出すのではなく、まずは自分自身のむし歯のリスクを正しく認識することが重要ではないかと日々感じています。
全員に同じアプローチが必ずしも必要なわけではありません。
またライフステージや生活環境が変化することで、同じ人でもリスクは常に変化していくものです。
個々に応じたむし歯予防を実践できるよう、かかりつけの歯科医院での相談や定期的な受診が重要ではないかと思います。
🦷使用方法が何よりも大事🦷
濃度の話ばかりになってしまいましたが、使用方法も大切です。
1日2回の歯磨き、使用する量、またうがいの回数など、フッ化物を効果的に使用することが何よりも大事です。
(口腔保健協会「4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」https://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/news/2023/news_230106.pdfより)
「おすすめの歯磨き粉は?」とよく聞かれますが、各メーカーがさまざまな製品を出していますので、量やうがいの回数を遵守できるようなフレーバー歯磨き粉を選択することが、ご自身にあった歯磨き粉選びの第一歩ではないでしょうか。