世界では、たくさんの新しい感染症(動物由来感染症)が見つかっています

動物由来感染症とは
「動物由来感染症」とは、動物から人間へうつる感染症をあらわす言葉です。動物由来感染症の原因となる病原体には、大きいものでは数センチ(時には数メートル)もある寄生虫から電子顕微鏡を用いなければ見ることのできないウイルスまで、様々な病原体があります。
世界では従来知られていなかった沢山の新しい感染症が今も次々と見つかっています。新型コロナウイルスやサル痘ウイルスも始まりは動物由来感染症だと言われています。

動物由来感染症が問題となってきた背景
人やもの(動物を含む)の国際的移動、土地開発等による自然環境の変化、野生動物のペット化等を背景として、今まで未知であった感染症が発生したり、忘れ去られていた感染症がその勢いを取り戻したりしています。それらの中には感染力が強く重症化する傾向のあるもの、治療法がないもの、ワクチンが実用化されていないものもあります(重症急性呼吸器症候群(SARS)、エボラ出血熱、マールブルグ病、ハンタウイルス肺症候群等)。
動物由来感染症は、世界保健機関(WHO)で把握されているだけでも200種類以上あります。また、近年問題になっている生物テロ兵器の、炭疽菌、ペスト菌、野兎病菌、ウイルス性出血熱のウイルス等の病原体も動物由来感染症の病原体です。

日本に動物由来感染症が比較的少ない理由
世界中で数多くある動物由来感染症のすべてが日本に存在するわけではありません。日本でみられるのは寄生虫による疾病を入れても数十種類程度と思われます。
日本は全体として温帯に属すため、熱帯・亜熱帯地域に多い動物由来感染症がほとんどありません。また、島国であるため周囲の国々からの感染源となる動物の侵入が人による持ち込み等に限られるため比較的少ないと思われます。
また日本では獣医学分野が中心となって家畜衛生対策、狂犬病対策を徹底して行ってきました。その結果、家畜のブルセラ病や牛型結核のように、家畜から人に感染する病気はほとんど見られなくなったり、狂犬病のようにワクチンや抗体で国内から一掃されたりもしています。
日本人は、日常的な衛生観念の強い国民であるといわれており、手洗いの励行やネズミ・ハエ等の対策を積極的に行ってきたこと等も関係があると思われます。

動物由来感染症の感染経路
病原体の感染は、感染源である動物から直接人間にうつる直接伝播と、感染源動物と人間の間に何らかの媒介物が存在する間接伝播の2つに分けられます。
直接伝播には狂犬病のように感染している犬・コウモリ・猫等に噛まれた場合や猫ひっかき病のように噛まれたり引っかかれたりした場合、また、オウム病のように糞便などから吸引したなどによるものがあります。
間接伝播には、日本脳炎のように蚊が運んでうつすものや、動物の体から出た病原体に汚染された水や土などを介して人にうつるもの、肉、鶏卵、乳製品、魚介などの食品が病原体(キャンピロバクターやサルモネラ等)で汚染されているなどがあります。
動物からの病気の感染を防ぐため、こんなことに注意しましょう。
・動物との過剰なふれあいはやめましょう。
・動物への口移しによる給餌や動物の食べた残りを食べることはやめましょう。
・動物と接した後は手洗いとうがいをしましょう。
・動物の排泄物(ふん、尿)には直接ふれないようにしましょう。
・動物の排泄物等(ふん、ごみ)を吸い込まないようにしましょう。
・飼い犬の登録と狂犬病予防注射を必ず受けましょう。(狂犬病予防法では飼い主に義務付けられています)

体に不調を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう
ペットが動物由来感染症の病原体に感染しても、動物は軽い症状や、無症状のことがあるため、知らないうちに飼い主が感染してしまう場合があります。また人間が動物由来感染症に感染しても、かぜやインフルエンザ、ありふれた皮膚病等に似た症状がでる場合が多く、病気の発見が遅れがちです。
野生動物やペットに噛まれた、マダニに噛まれたなどの場合は早めに病院を受診しましょう。特に小さな子どもや高齢者は一旦発病すると重症化しやすいので注意が必要です。