知っているようで知らない貧血

貧血といえば、「めまい・立ちくらみ」 「鉄分を摂れば治る」
このようなイメージがありませんか?
しかし、その立ちくらみは、貧血とは異なる起立性低血圧の可能性もあります。
また、鉄分を摂取するだけでは解決しない、別の問題をかかえている貧血もあります。
【貧血とは?】
血液の成分である赤血球の中のヘモグロビン(酸素を運ぶ役割)の濃度が
低くなった状態を指します。
貧血には何十もの原因があり、比較的小さな問題(バランスの悪い食事など)から、深刻な問題(癌など)まで様々です。
【貧血の種類】
貧血の中でも最も頻度が高いのは鉄欠乏性貧血です。
しかし、それ以外にも、溶血性貧血・腎性貧血・巨赤芽球性貧血・再生不良性貧血など多くの種類があり、それぞれが重複することもあります。
慢性炎症や出血、薬の副作用に伴う貧血までも含めると、一口に貧血といってもきわめて多様です。
また、貧血の原因が鉄欠乏だとわかったとしても、今度は鉄欠乏の原因が何かを突き止めないといけません。
一般的な鉄欠乏の原因として、若い男性では胃や十二指腸の潰瘍や痔、女性ではダイエットによる鉄の摂取不足や子宮筋腫による月経過多などが多く、さらに中高年以降では男女ともに胃がんや大腸がんが原因となることもあります。
【鉄欠乏性貧血でみられる症状】
血液検査の結果、「貧血」にまで至っていないケースを含め、
鉄欠乏があると次のような症状が現れ、生活の質が下がってしまいます。
貧血のイメージ通りの症状
・体がだるい ・疲れやすい ・動悸 ・息切れ
・顔色が悪い ・ふらつき
貧血とは思われにくい症状
・イライラする ・かっとなる・気分が落ち込む
・集中力の低下 ・意欲の低下 ・認知症のような症状
・睡眠が浅くなる ・風邪をひきやすくなる
・胃腸が弱い ・のどの違和感 ・口内炎
・爪が弱くなり割れる
・硬いものを噛みたくなる
(氷や飴、爪をガリガリ噛んでしまう)
・耳鳴り ・よくあくびが出る ・冷え性・むくみ
鉄が体内で担う働きは多岐にわたります。
鉄は主に赤血球のヘモグロビンの材料に使われていますが、代謝や細胞増殖などの生命現象に必須の栄養素でもあります。
また、心の健康に深くかかわる脳内の神経伝達物質の合成にも関与しているため、
鉄が不足すると身体面だけでなくメンタル面にも不調も出てくるという訳です。
【治 療】
背景に貧血の原因となる疾患がある場合には、それに対する適切な治療が原則です。
もし鉄欠乏があれば、同時に鉄剤の投与も行います。
その他ビタミン B12、葉酸などの摂取不足が原因の場合は、ビタミン製剤を投与することがあります。
大事なことは、「たかが貧血」と自己判断で済ませずに、受診して検査を受けることです。
例えば、大腸がんからの出血による鉄欠乏性貧血だった場合、市販の鉄剤を服用すると貧血は改善して症状は軽くなりますが、
がんの発見が遅れることになりかねません。
原因を解明することが、貧血の治療と治癒のカギになります。