耳の日について考えよう

3月3日は「耳の日」またWHOが定める「国際耳の日」です。
「耳の日」は、耳や聴力について多くの人の関心を集めること、そして難聴と言語障害をもつ人びとの悩みを少しでも解決したいという、社会福祉への願いから始められました。

難聴とコミュニケーション障害
自覚の有無にかかわらず、聴力の感度が下がった状態が「難聴」です。
30代からモスキート音(蚊の羽音の様な高い音)が聞こえにくくなるなど、会話に支障がなくても難聴は始まっています。
両耳が聞こえにくくなって会話に支障が出る加齢性難聴は誰にでも起こる可能性があり、70歳以上の約3人に1人、80歳以上になると約3人に2人が難聴とわれています。

聞こえなくなるというのはコミュニケーションの障害です。
声を掛けられても聞こえず、返事をしないと「あの人は何だ、無礼な人だね」と誤解を受けて社会的に孤立する、さらに言葉を聞いて嬉しい、悲しいなど情動の反応が落ちて脳が萎縮するという悪循環が働きます。
さらにコミュニケーションが取りづらくなり、認知症につながっていきます。

認知症、うつ病の大きな因子

難聴から来る認知症の原因は、コミュニケーションの障害の他に、糖尿病や脂質異常による耳へ栄養を運ぶ血流循環の障害など様々な仮説があります。
認知症とうつ病は、その発症において関連性があり、この二つの疾病が特に一人暮らしの中高年者に発症しやすいことが明らかになっています。
また難聴があると、正常聴力の方と比べ2~3倍認知症やうつ病になりやすくなることも分かっています。
2017年にイギリスの医学雑誌で認知症の65%は発症を予防できないが、35%は予防可能と報告されました。
その35%の内容をみると「45歳から65歳までの難聴」の率が最も高く9%となっています。
この年代の難聴者において補聴器をもって聴力を補うことで、全認知症の9%、11人に1人は認知症の発症を予防できる可能性がある、としています。

難聴対策は認知症を予防する

超高齢化社会においては、難聴への対処がかなり大事になってきます。
日本での補聴器利用率はイギリスの3分の1以下となっていますが、聞こえないことで社会的に孤立しないため、また情動の反応が日常的に頭の中で起こるようにするために有効なのが補聴器です。
補聴器を着けることで、認知症、うつ病はある程度予防できるのです。

しかしメガネと違い補聴器をつけたらすぐに快適に聞こえるわけではありません。
補聴器から入ってきた音を、脳の中で言葉として理解するための調整とリハビリが必要です。
それを知らずに購入して、うまく聞こえないとやめてしまう方も多いです。
脳が働きかけに応じて変化する能力は、若ければ若いほどあります。
言葉を正確に聞き取れないという段階から、補聴器に慣れて、補聴器の音に脳をトレーニングしていくと、80代90代になっても上手く使えるのです。
ただ、安い買い物ではありません。
基本的な性能を持った物は片耳で10万円台、両耳で20万円台から購入できます。
将来的な認知症になるリスクを減らすためにも、人生のどの段階で補聴器が必要になるか考えてみてください。
生活する環境によっても違うので、会話に問題が起こってきたら早めに耳鼻咽喉科にご相談ください。