誤嚥性肺炎とは

食べ物や飲み物、あるいは唾液などを飲み込むことを嚥下(えんげ)といいます。
高齢になるとこの嚥下の機能が低下して、本来なら食道から胃へと送られるものが誤って気道の一部である気管に入ってしまうことがあります。これが「誤嚥(ごえん)」です。誤嚥性肺炎は、細菌が唾液や食べ物などと一緒に誤嚥され、気管支や肺に入ることで発症する疾患です。
誤嚥性肺炎を起こすのは、高齢の人や、脳梗塞の後遺症やパーキンソン病などの神経疾患を抱えている人が多いです。
典型的な症状として発熱、咳、濃い色の痰などが挙げられます。高齢者だとこれらの症状が現れにくく、普段より元気がない、ぼんやりしている、食欲がないといった症状だけが現れることもあります。
眠っている間の誤嚥に注意
例えば食事の時、飲食物などが気道に入ればむせてしまいます。これは本人や周囲の人も気づく「顕性誤嚥」と呼ばれます。
しかし、気づかないうちに気道に入ってしまう「不顕性誤嚥」にも注意が必要です。なぜならば、食事の時は問題なく飲み込めていても、眠っている時など、知らない間に鼻、のど、口腔内の分泌物の誤嚥を繰り返していることがあるからです。
加齢とともに喉頭の位置が下がり飲み込む力が弱まったり、異物に対する上気道の反射(咳やくしゃみなど)が弱まったり、あるいは睡眠薬や鎮痛薬、向精神薬などの使用で嚥下反射の機能が低下することによって不顕性誤嚥が生じます。
介護状態で寝たきりの方などはもちろん注意が必要ですが、普段健康に過ごしている方でも、嚥下障害を持っている可能性があるため、誤嚥への対策をとることが大切です。
誤嚥性肺炎を予防するには
○体位保持…睡眠時に頭の位置を少し上げ、下あごの位置を嚥下しやすくすることにより誤嚥は避けられます。角度を変えられるベッドがない場合でもクッションなどで代用が可能で、10~30度くらいの角度を保つようにしてお休みになると安心です。
○嚥下機能訓練…加齢による嚥下機能の低下も、肺炎のリスクの一つです。嚥下機能は使わないと退化してしまうので意識して訓練をすることが大切です。日常生活の中で声を出して意識的に会話することも嚥下機能の回復につながります。パタカラ体操もおすすめです。
<パタカラ体操>
「パ」  口唇を閉じる
「タ」  口蓋に舌先をつける
「カ」  口蓋の奥に舌の付け根付近をつける
「ラ」  巻き舌にして口蓋に押し当てる
○口腔内を常に清潔に保つ…誤嚥性肺炎は口腔内に存在している細菌が原因であることが多いとされており、口腔内が清潔に保たれていれば、肺炎の原因となる細菌を減らし、発症予防になります。
○肺炎球菌ワクチンの接種が有効…誤嚥性肺炎でも肺炎球菌は主な起因菌の一つであることがわかっています。
十分な栄養、運動、睡眠、持病の適切な治療に加えて、健康維持のために誤嚥予防も取り入れてみましょう。