スマホと急性内斜視

短期間のうちに、片方の目が内側に寄って左右の視線がずれる「急性内斜視」。これまでは脳や神経由来の原因で稀に起こるとされていた病気でしたが、ここ数年で10代を中心に急増しています。因果関係はまだ解明されていませんが、スマートフォン(スマホ)の過剰使用が引き金になっている可能性が高いのではないかということで、最近メディアでも取り上げられ話題となっています。
急性内斜視とは?
後天内斜視(生後6か月を過ぎて発症)のひとつで、突然片眼が内側に寄ったまま戻らなくなる病気です。
先天内斜視(生後6か月以内に発症)とは異なり、複視(遠くのものが二重に見える)という症状がみられます。片眼ずつ見るとひとつに見えますが、物の遠近感や立体感はつかみにくくなります。
なぜスマホが原因?
手元にピントを合わせる時、眼は輻湊(ふくそう)といって少し内側に寄ります(眼球を内側に向ける筋肉「内直筋」が縮んだ状態)。遠くを見る時は輻湊が解除されるため、内側に寄っていた眼が真ん中の位置に戻ります。若いうちは、近いところを長時間見ていることに、あまり疲れを感じません。スマホを見ていると、あっという間に時間が経過してしまいますが、この輻湊は長時間続くと解除されにくくなります。そしてある日突然、遠くを見ようとしても輻輳が解除されず、急性内斜視(「内直筋」が縮んだまま戻らない状態)が生じるのではと推測されています。より注意が必要なのは、目の発達が十分でない10歳以下の子どもです。斜視側の眼を無意識に使わなくなり、視力が発達せずに弱視になったり、うまく立体視できなくなったりするおそれがあります。成人でも急性内斜視は発症します。特に近視の人がなりやすいと言われています。近視の場合、スマホ画面を極端に目に近づけて寄り目になりやすく、また裸眼の時の視界はぼやけているため、症状としての複視も自覚しづらいといいます。
治療法は?
まずはスマホの使用を控えますが、それだけでは回復しないケースも多いのが現状です。複視の症状は、特殊な屈折レンズを使ったプリズム眼内直鏡で矯正できます。また、ボツリヌス菌が作り出す成分を注射することで、筋をまひさせて緩める治療もあります。どうしても治らない時は、手術により内直筋の位置を変えることもあります。
予防するには?
スマホを使用する際、以下の点に注意しましょう。
①できれば1日1~2時間(最大でも4時間)まで
②画面は目から30cm以上離す

③30分使用したら5分休憩(休憩時は、遠くを見て眼の筋肉を緩める)

④ベッドやソファで寝ながら使用しない(左右の眼から画面までの距離に左右差ができ、内斜視が起こりやすくなるため厳禁)
多くの人にとって、今や生活に欠かすことができないスマホ。過度な依存は、身体面だけでなく、精神面や社会生活にも影響が出ることを忘れてはいけません。
不調が出てしまう前に、一度スマホとの付き合い方を見直してみてはいかがでしょうか。