筋力強化には食事も大切です

高齢者は日常生活の活動量減少による食欲低下などから、食事を十分摂れず低栄養状態に陥りやすいと言われています。
現在、シニアと呼ばれる方の実に3割近くが「低栄養」状態にあるそうです。運動は健康の第一歩ですが、運動をしただけではその効果を活かせないのです。
加齢と共に運動能力も低下している状態に加え、運動に必要とされるエネルギーなどが不足している身体で行う運動は大変危険です。本当の健康づくりには、運動と同時に運動のできる身体作りが重要です。

年齢と筋力
筋力は、運動をしないでいると加齢とともに衰えます。50歳を過ぎると筋肉量は毎年1~3%ずつ低下し、60代からその減少は加速します。
また、たんぱく質は筋肉をつくるのに欠かせないため、不足すると筋力の低下につながります。筋肉量の維持・増大のために、食事で良質なたんぱく質を摂取する必要があります。
その際、たんぱく質を筋肉に合成するスイッチとして、アミノ酸が不可欠となります。このアミノ酸の中でもロイシンは重要であり、空腹時でも筋肉合成を続けさせる作用があることが報告されています。高齢者も、スクワットなどの運動後に必須アミノ酸を摂取することで、筋肉の合成が促進されると言われています。

では、何を食べるといいの?
魚、肉、卵、大豆製品、乳製品などには、良質のたんぱく質が含まれています。良質のたんぱく質とは、たんぱく質を構成するアミノ酸の中でも特に体内では合成することができない必須アミノ酸をバランスよく含んだたんぱく質のことです。必須アミノ酸の中でも、筋肉の保持や増量に最も重要な役割をしているのが、分岐鎖アミノ酸(BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン)です。BCAAは良質なたんぱく質の中でも、まぐろ、かつお、あじ、さんま、牛肉、鶏肉、卵、大豆、高野豆腐、チーズなどに多く含まれています。
・まぐろ赤身生刺身 約8切れ
・かつお 100g
・あじ 中1匹
・さんま生 中1匹
・鶏肉(胸肉)100g
・鶏肉(もも肉)100g
・牛肉(サーロイン)100g
・卵 1個(50g)
・凍り豆腐 1枚(16g)
・納豆 1パック(50g)
・木綿豆腐 1/4丁
・牛乳 コップ1杯(200ml)
・チーズ 小1個(20g)
を目安に、毎食1~2品を取り入れましょう。
高齢者は肉や魚の摂取量が少ない傾向にあり、栄養が偏りがちです。朝食が簡単すぎたり、少食すぎたりするのも問題です。健康な身体作りには、毎日の食事でタンパク質を十分に摂取することが重要です。肉や魚だけでなく、乳製品や大豆製品からもたんぱく質は摂れるので、飽きない献立作りが必要です。

適切なカロリー摂取も大切です
特に、運動後の身体は、体内エネルギーを消費した状態です。運動後にエネルギーを補充するだけで、疲労感や動かした筋肉を修復するスピードが変わってきます。健康のためにと始めた運動も、低栄養状態では疲労感しか残らないという結果になってしまいます。そうならないためにも運動後に適切な栄養素・カロリーを摂ることはとても大切なのです。栄養の摂取量はシニアの健康状態によって異なりますが、厚生労働省発表の「食事摂取基準(2015年版)」によると、70歳以上のシニアは「BMI(体格指数)」を「21.5~24.9」に保つのが望ましいとされています。運動と正しい栄養のバランスをうまく保つことが、元気なシニアであり続けるための秘訣です。