再生医療とは、私たちの体の細胞や組織、例えば心臓が怪我や病気や老化などの原因で十分に機能しなくなり体調が悪くなったときに、必要な細胞や臓器(心臓)を補う治療のことです。
そのため広い意味では輸血や臓器移植なども再生医療の一種といえます。
しかし提供者の不足などから、心臓や脳に代表される細胞があまり増えない臓器での再生医療は簡単ではありません。
そこで治療に必要な生きた細胞や臓器を手に入れるために、体の外で増やす方法として注目を浴びているのが、ES細胞やiPS細胞といった多機能幹細胞です。
多機能幹細胞は体を構成する全ての種類の細胞(例えば心筋細胞や肝細胞、パーキンソン病などと関連するドパミン神経細胞、血管の再生に使われる血管内皮細胞)に分化できるという性質があり、分裂回数にも制限がありません。そのため再生医療において期待されています。
再生医療と細胞治療
再生医療とは、生きた細胞そのものを使う治療だけではなく、細胞を活性化させる因子を投与し、患者さんの体内で組織を再生させる方法や免疫細胞の投与によるがん治療も含みます。
細胞治療は、体外で加工又は変革された自己由来、または他種由来の細胞を投与することによって治療することです。マスコミで言われている狭義の再生医療に当たります(iPS細胞を用いた治療もこれに当たります)。細胞治療に使われる細胞は細胞加工物もしくは再生医療等製品と呼ばれます。
レギュラトリーサイエンスの重要性
細胞加工物を治療に使用する際に重要となるのが、品質や有効性、安全性の確保です。
患者さん本人やボランティアの方から採取した細胞・組織から必要な細胞を分離あるいは培養して目的とする細胞を作り、それを細胞加工物として患者さんに投与することになります。
生きた細胞であるために熱で滅菌することができないので、ウイルス感染されていないかどうか確認できることが重要です。
また作られた細胞が均質なのか、目的細胞にきちんと分化しているか、癌化しないのか、望ましくない免疫反応は起きないかなど課題は山積みです。
現在の問題点は技術の進歩により次々登場する新製品の開発速度に、安全性有効性の評価方法の開発が追いつかない事だそうです。
その問題を解決するための科学が「レギュラトリーサイエンス(製品の評価法の開発・検証のための科学)」です。
その進歩で現在細胞加工物における新たな造腫瘍性評価法も開発されて、正常細胞100万個当たり1個のがん細胞の混入でも検出できるようになりました。
再生医療の安全性を考える上で注意すべきポイント
再生医療の効能などについて不適切な宣伝も世界的に問題となっているようです。
科学的に効果が認められないような治療の広告に幹細胞や再生医療という言葉が使われ、患者さんが無条件に信じてしまう危険もあるそうです。
例えば美容や抗加齢、多くの進行がんの治療への利用は安全性や有効性が確認されていないのに臍帯血の移植がされた事件などもそれにあたります。
宣伝文句にのらないよう、
①行う人:再生医療の経験・知識が十分な医療従事者
②使う物:細胞加工品(再生医療等製品)の品質や、特徴・用途などに注意が必要です。