◆◆大うつ病性障害のある成人での急性治療における 21の抗うつ薬の有効性と忍容性の比較◆◆

【背景】

大うつ病性障害は、成人において世界的に、最も一般的で、負荷が大きく、また費用のかかる精神疾患の一つである。薬理学的および非薬理学的治療が有効であるが、支援が不十分であるために、抗うつ薬が心理学的介入よりも高い頻度で使用されている。これらの薬剤の処方については、最良で有効なエビデンスによる情報が与えられるべきである。そこで我々は、単極性大うつ病性障害を有する成人の急性治療における抗うつ薬を比較してランク付けするために、以前の研究を更新および拡張することを目的とした。

【方法】

我々は、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った。Cochrane Central Register of Controlled Trials、CINAHL、Embase、LILACS database、MEDLINE、MEDLINE In-Process、PsycINFO、規制機関のウェブサイト、および国際登録簿において、それぞれの開始時から2016年1月8日までの間に公表または非公表の二重盲検無作為化比較試験を検索した。我々は、標準操作的基準(standard operationalised criteria)によって大うつ病性障害と診断された成人(18歳以上の男女)の急性治療に使用された21の抗うつ薬のプラセボ対照および直接比較(head-to-head)試験を組み込んだ。準ランダム化試験および未完了の試験、あるいは双極性障害、心因性うつ病または治療抵抗性うつ病の参加者、または重篤な併発内科的疾患のある患者を20%以上包含する試験は除外した。我々は、事前に規定した序列に従ってデータを抽出した。ネットワークメタ解析ではグループレベルのデータを用いた。我々は、the Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventionsに従って試験のバイアスリスクを、the Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation frameworkを用いてエビデンスの確実性を評価した。主要評価項目は、有効性(奏効率)と忍容性(何らかの原因による治療中止)とした。我々は、従来の一対比較(pairwise)と変量効果によるネットワークメタ解析を用いて要約オッズ比(summary odds ratios:ORs)を推定した。この試験はPROSPERO、ナンバーCRD42012002291に登録されている。

【結果】

我々は、28552の引用およびその中に含まれる116477例の参加者からなる522の試験を確認した。有効性に関しては、全ての抗うつ薬がプラセボよりも有効であり、ORsはamitriptylineの2.13(95%信用区間[CrI]:1.89-2.41)からreboxetineの1.37(1.16-1.63)の幅があった。忍容性については、agomelatine(OR 0.84、95%CrI 0.72-0.97)とfluoxetine(0.88、0.80-0.96)のみプラセボよりも脱落者が少なく、一方でclomipramine(1.30、1.01-1.68)はプラセボよりも悪かった。全ての試験が考慮された場合に、抗うつ薬間のORsの差異は、有効性では1.15から1.55、忍容性では0.64から0.83に及び、比較分析の大部分においてCrIsは幅広くなった。直接比較(head-to-head)試験では、agomelatine、amitriptyline、escitalopram、mirtazapine、paroxetine、venlafaxine、vortioxetineは他の抗うつ薬よりも有効(ORs範囲1.19-1.96)であった一方、fluoxetine、fluvoxamine、reboxetine、trazodoneは最も効果の低い薬であった(0.51-0.84)。忍容性については、agomelatine、citalopram、escitalopram、fluoxetine、sertraline、vortioxetineは他の抗うつ薬よりも良好(ORs範囲0.43-0.77)であった一方で、amitriptyline、clomipramine、duloxetine、fluvoxamine、reboxetine、trazodone、venlafaxineは高い脱落率(1.30-2.32)を有していた。522試験のうち46試験(9%)はバイアスリスクが高く、380試験(73%)は中程度、96試験(18%)は低く、エビデンスの確実性は、中程度から非常に低いとされた。

【考察】 全ての抗うつ薬は、大うつ病性障害の成人においてプラセボよりも有効であった。プラセボ比較試験が解析に組み込まれると実薬間の差異が小さくなる一方で、直接比較(head-to-head)試験では有効性と忍容性における大きなばらつきがあった。これらの結果は、エビデンスベースに基づく治療を提供するべきであり、また患者や医師、ガイドライン開発者、政策立案者に様々な抗うつ薬の相対的なメリットを情報提供するべきである。

(391;1357-66:Andrea Cipriani et al:APRIL 7,2018)

※上記本文中に登場する薬剤で、国内で発売されているものの主な商品名は以下の通り。

amitriptyline(トリプタノール)、clomipramine (アナフラニール)、escitalopram(レクサプロ)、mirtazapine(レメロン・リフレックス)、paroxetine(パキシル)、venlafaxine(イフェクサー)、fluvoxamine(デプロメール・ルボックス)、trazodone(デジレル・レスリン)、sertraline(ジェイゾロフト)、duloxetine(サインバルタ)