◆アテローム性動脈硬化患者での肺がん発症における カナキヌマブによるインターロイキン-1β阻害の効果◆

◆アテローム性動脈硬化患者での肺がん発症における カナキヌマブによるインターロイキン-1β阻害の効果◆

【背景】
インターロイキン-1β(IL-1β)を介する腫瘍の微小環境における炎症は、がんの侵襲性、進行、および転移において主要な役割を持つとの仮説がある。我々は、the Nod-like receptor protein 3(NLRP3)インフラマソーム(inflammasome)の主要産物のカナキヌマブ(canakinumab)による阻害が、がん発症を様変わりさせるかどうか確証する目的で、アテローム性動脈硬化におけるIL-1β阻害の役割に関する無作為化試験であるthe Canakinumab Anti-inflammatory Thrombosis Outcomes Study(CANTOS)において追加解析を行った。

【方法】
我々は、心筋梗塞の既往があり、がんと診断されたことはなく、高感度C反応性蛋白(hsCRP)が2mg/L以上のアテローム性動脈硬化患者10061名において、カナキヌマブの無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。用量反応効果を評価するために、患者らはコンピューター作成コードにより3つのカナキヌマブ投与量(50mg、150mg、300mg、3ヵ月毎に皮下投与)あるいはプラセボのいずれかへと無作為に振り分けられた。参加者はがんの発症診断について追跡調査され、薬剤や投与量の振り分けをマスクされた腫瘍学エンドポイント委員により裁定された。分析は包括解析とされた。この試験はClinicalTrials,gov、NCT01327846に登録されている。この試験は終了している(最後の患者訪問は2017年6月)。

【結果】
ベースラインのhsCRP(中央値6.0mg/L vs 4.2mg/L;p<0.0001)およびインターロイキン6(3.2 vs 2.6ng/L;p<0.0001)濃度は、がんと診断されなかった者よりも後に肺がんと診断された参加者において有意に高値だった。中央値3.7年の追跡期間中に、プラセボと比較して、カナキヌマブは用量依存的にhsCRPで26-41%およびインターロイキン6で25-43%の濃度低下と関連していた(全比較でp<0.0001)。全がん死亡(n=196)はプラセボ群よりもカナキヌマブ統合群で有意に低値だった(p=0.0007 for trend across groups)が、個々でみると300mg群のみがプラセボより有意に低い結果となった(ハザード比[HR]0.49 [95%CI 0.31-0.75];p=0.0009)。肺がん発症(n=129)は150mg群(HR 0.61 [95%CI 0.39-0.97];p=0.034)および300mg群(HR 0.33 [95%CI 0.18-0.59];p<0.0001;p=0.0001 for trend across groups)において有意に頻度が少なかった。肺がんによる死亡はプラセボ群よりもカナキヌマブ300mgで有意に少なく(HR 0.23 [95%CI 0.10-0.54];p=0.0002)、プラセボ群と比較してカンキヌマブ統合群でも同様であった(p=0.0002 for trend across groups)。致死的な感染あるいは敗血症がプラセボ群と比較してカナキヌマブ群ではより多くみられた。全原因死亡において、カナキヌマブ群とプラセボ群との間に有意差はみられなかった(HR 0.94 [95%CI 0.83-1.06];p=0.31)。

【考察】
我々の仮説を生み出すデータは、IL-1β自然免疫経路(innate immunity pathway)をターゲットとするカナキヌマブによる抗炎症治療が肺がん発症と肺がんによる死亡を有意に減らせるかもしれない可能性を示唆している。がんスクリーニングおよび治療のフォーマルな場面で、これらのデータの複製が必要である。

(390;1833-42:Paul M.Ridker et al:OCTOBER 21,2017)

※カナキヌマブは「イラリス」の商品名でノバルティスから発売されている。